秋晴れの空の下、教会の鐘が鳴り響く。
若い男女が腕を組み、バージンロードを歩いていく。
誓いの言葉とともに口付けが交わされる。
花嫁の長い髪が秋風に揺れる。
「素敵ね…。こんな日がくるなんて…」
花嫁の母親が呟く。
「どうした?」
優しげな声が響く。
「ううん、何でもないの。娘の結婚式を見ることができて、幸せだなって思っただけ。
これも貴方のおかげね」
「ん? 僕が何かしたっけ?」
声に訝しげな気配が混ざる。
「したじゃないの。あの時に私を砲台山へ連れて行ってくれた。
だから私は手術を受ける覚悟ができたし、こうやって娘もできた。
貴方が見守ってくれたから、私はこうして生きていられるの」
里香が答える。
「ん〜、僕は自分のしたいことをしただけなんだけどなぁ。
まあ里香がそんなに素直なのは珍しいから、ありがたく受け取っておくか」
裕一が悪戯っぽく言う。
「さて、ライスシャワーだ。二人を祝福しよう」
素早く手を差し出し、里香を立ち上がらせる。
里香は一瞬むくれかけたが、肩をすくめて裕一の手を取ると二人で歩き出すのだった。
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