ピンポーン
家のチャイムが鳴る。
里香が来たのだろう。
僕は財布を持って家を出る。
「よう」
玄関前に立っている里香を見る。
浴衣を着た里香がそこに居る。
……可愛い。
いつもは下ろしている髪を一つに纏めてアップにしている。そして空色の生地に橙の襟が入り、桃色の帯で締めてある浴衣。
手に持った小さな巾着袋。さらには薄く施してある化粧。
その可憐さ。そして僕のためにここまで気合いを入れておめかししてくれた里香の気持ちを思うと、すごく嬉しくなる。
というか、この場で抱きしめたくなる。
「どうしたの?……わたし、変……かな?」
動きが止まっていた僕を不信に思ったらしく、不安そうに聞いてくる里香。
「いやいやいやいや、全然、めちゃくちゃ可愛い。凄い綺麗」
我ながら馬鹿としか思えない感想が口から出ていく。
もう少し気が利いたことが言えないかと思うけど、仕方ない。里香が可愛すぎるんだ。
「ありがと」
里香がほんのり頬を赤くして、短く答える。
「どういたしまして」
僕も律義に返してしまう。
二人して顔を赤くし、見つめ合う。

「ん」

そのまま勢いで唇を重ねる。里香の柔らかさを感じる。
見てる人がいないかドキドキ物だけど、そんな不安よりも里香の方がよっぽど可愛かった。
というかさっきから脳内が里香可愛いの一言で埋め尽くされている気がする。
まあ仕方ない。里香が可愛過ぎるのがいけないんだ。
「いこうか」
「うん」


里香を自転車の後ろに乗せて川沿いを走る。
「どこで花火見るの?」
「内緒」
今日は伊勢市の花火大会だ。
その話をしたら、里香に連れて行けと命令されて、今日の運びとなった。
まあ言われなくても誘うつもりだったんだけどね。
「えー、なにそれー」
里香が不満そうな声を上げる。
「いいから黙ってついてくる」
ついてくると言うよりは、乗っているだよなあ。なんて思いつつ、ペダルを踏む。
「はーい」
川岸の屋台が並んでいるところでとまる。
この川岸で座りながら見るのが、この花火の一番の王道だったりする。
「ここ?」
不思議に感じたんだろう。そりゃそうだ、こんなところで見るならわざわざ隠す必要ないもんな。
「違うよ。飯調達。好きなの買ってきて」
「わかった」
里香が納得という顔をする。
僕が財布を渡すと、それを受け取り、ひょいと自転車から降り、ぱたぱたと縁日に走っていく。
「可愛いよなあ」
後姿を見て、再度思う。
というかあれが僕の彼女なんだよなあ。
バチが当たらないだろうか。容姿だけで比べたら不釣合いもいいところだもんな。
ま、釣り合いなんて本人たちが納得してればどうでもいいんだけどさ。
そんなことを下らないことを考えているうちに、向こうから袋を2つ持った里香が小走りで駆けてくる。
「これでいい?」
袋を開き中に入った食い物を見せてくる。
たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、りんごあめ、じゃがバター、とお祭りの定番が盛り沢山には入っている。というか、二人で食いきれるか?これ。
「いいけど、多くない?」
里香が軽くあわてた感じで説明する。
「いやね、最初は全部少なめに注文したんだよ。でも、お店の人がみんなおまけって言って、多めに盛ってくれてね、断れないでしょ?こんなになっちゃった」
アハハと苦笑いを浮かべる里香。なるほど、可愛いとこんな弊害があるんだ。新たにすこし学んだ気分だ。
「仕方ないなあ。頑張りますか」「頑張ってください」
「里香も食べるの」
「はぁい」
あははははと二人で笑う。何かが面白いわけじゃないけど、でも自然に出てきた笑いだった。
「さあ行きますか。乗った乗った」
ひとしきり笑ったあと、袋を受け取り、里香を促す。
「了解。で、どこ行くの?」
「乗ってればわかる。いくぞ」
「きゃっ」
一気にペダルを踏み、加速する。里香が僕の腰にしがみつき、腕がおなかに回される。
「しっかりつかまってろよ」
「うん」
僕と里香を乗せた自転車は砲台山への坂を登り始めた。









砲台山の、去年の冬、僕と里香が原付でやってきたそこに、今度は自転車でやってきた。
というかすこし後悔。前は原付だからよくわからなかったけど、自転車だと良くわかる。
二人乗りでこの坂はキツイ。しかも砂利道だし。
駐車場に自転車を置き、そこからは徒歩で登る。
ほんの少しの階段を登ると、去年と何も変わらない景色が眼下に広がる。

僕に取っては色んなことがあった一年だけど、世界は何も変わってないのが分かる。
まあそれもどうでもいい。世界は世界。僕は僕だ。里香が元気で、僕と一緒にいてくれる。今はこれで充分だ。先のことは先に考えればいい。
「ここ」
「そう」
「ここから見えるの」
「ばっちりだ」
何せ伊勢だ。花火を遮るような高い建物なんてないし、静かだし、なにより人もいない。

里香は僕から袋を奪い、砲台に座る。
「はやく来なよ」
「少し休ませろよ」
ここまで自転車なんかで来たことで、僕はしっかりと息が上がっていた。
「ヘタレ」
「ばっ、誰がヘタレだ」
前と違って人力でここまで連れて来てやったのに、なんて言い草だ。
「いいからこっちくる」
町のほうをを向いたまま命令してくる。
まったく自分勝手な女だ。
「わかったよ」
里香の横に腰掛ける。
「はい、あーん」
即座に横から爪楊枝に刺さったタコ焼きが差し出される。
「あいよ」
僕はそれを躊躇なく頬張る。
「むー、恥ずかしがるか、なんか反応してよ。つまらない」
「つまらないって言われてもなあ。見てる人もいないし」
「まあいいけどさ。美味しい?」「うん、旨い」
「ならよし。さあ食べようか」
僕と里香の間に沢山の食い物が並べられる。
「本当に多いな」
「頑張れ裕一」
「はいはい」
里香は無理して食う気がないのね。
勿体ないお化けがでないように頑張るか。僕は軽く気合をいれて食い始めた。
「裕一、花火何時から?」
「ん、後三十分」
「どれくらいやるの?」
「短いよ三十分位だったと思う」「琵琶湖とか隅田川のより大分短いね」
「まあ伊勢だからなあ」
過疎都市とそのへんの大都市を比べちゃいけない。
「でも私はこっちの方がいいや」「なんで?」
「裕一がいて、裕一と私が居る町の花火だから」
里香は何の邪気もない笑みを浮かべて言う。
当然僕はそんな予想外の方向から来た攻撃に耐えれるわけがなく、「ん?裕一どうしたの?」
不自然に思ったのか、こちらを向いた里香の唇を奪う。
「んむっ」
躊躇なく舌を里香の中に侵入させる。
そのまま里香の味を味わう。
ソースの味と里香の唾液が混じり、独特な風味がする。
そのまま、里香の咥内を存分に味わい、唇を離す。
「ぷはっ、き、急に何するのよ」「里香が可愛いんだからしかたないだろ」
「バ、バカ」
頬を赤くして、町の方を向いてしまう。
怒るというよりは、照れ隠しだろう。
「はは、もう始まるぞ」
僕はカメラを取り出して、砲台から降りる。
適度な距離を開けて、里香の背中をファインダーの中に入れる。
「里香、こっち向いて」
「ん?」
背中越しに振り返る。
「体ごと」
「はーい」
こちらに体を向き直す。
「何か持ってよ。花火と一緒に取るから」
「指示が多いなあ」
いたづらっぽい声音でそう言う里香。
「いいから」
「はーい」
袋の中を見て、残った食い物を探す里香。
結構真剣に悩んでるみたいで、真面目な顔をする。

パシャ

「あ、今撮ったでしょ」
「うん。浴衣で真剣な顔してる里香が面白かったから撮った」
悪びれずに言ってみる。
「もう。これでいいかな?」
膝にタコ焼きのパックを乗せ、手にフランクフルトを持つ。
「どう?」
「うん。いい感じ」
フレームの左側に里香。右上に七分くらいの月。
後は月の下に花火が来たら構図としては完璧だ。
そう思っているうちに、下から火が昇ってくるのが見える。
「里香、撮るぞ」
里香が頷く。
「はい、チーズ」

パシャ

タイミング良く開いた大輪の花、雲一つない満点の星空、そこに浮かぶ真っ白な月、そして満開に笑った里香。
僕がこれまで撮った中で最高の写真になる自信があった。
「ねぇ、フラッシュ焚いてないけど大丈夫なの?」
「高感度フィルムだから大丈夫」「なるほど。裕一、そのカメラタイマーあるよね」
「あるよ」
古いカメラだけど、それくらいはついている。
「二人で撮ろうよ」
「二人で?」
「そう。ほら早く」
「わ、わかったよ」
手頃な切り株の上にカメラを置き、ピントと絞りを調整する。
時間は……15秒でいいかな。
「里香、いくぞ」
「うん」
タイマーをスタートし、急いで里香の横に座る。
「何秒くらい?」
「あと10秒くらい」
「そっか」
「ああ」
「えいっ」
里香が掛け声と共に抱き着いてくる。
僕の腰に腕を回し、顔を胸にくっつける。
僕は少し驚いたけど、僕も里香の肩に手を回し、抱き寄せるようにする。

パシャ


後から分かったことだけど、この時の写真は僕も里香も、とても幸せそうな、自然な笑顔だった。



「裕一、今の写真、焼き増しして私に頂戴」
「わかった」
何気に撮った段階で里香に写真を要求されたのは初めてだったりする。
「花火見ようか」
「うん」
花火の方に向き直り、花火を見る。
里香がコテンと頭を傾け、僕の肩に乗せる。
僕は写真の時と同じように里香の肩に手を回す。
「綺麗だね」
パラパラと上がる花火を見る里香。
僕は花火よりそっちを見ていた。「ああ」
そのまま何も言わずに僕と里香は花火を見る。
フィナーレと言わんばかりに続けて四発の花火が上がり、静寂が戻ってくる。
「終わり?」
「終わり」
「そっか、もう終わりか」
里香はぴょんと砲台から飛び降りて、こっちへ振り返る。
「もう帰るの?」
首を傾げて聞いてくる。
これは、そういうことを聞いて来ているんだよな。
僕は里香の前に立ち、その唇を塞いだ。
「したい」
唇を離し、そう告げる。
「へえ、裕一はしたいんだ。こんな外で私を抱きたいんだ」
いつもの僕をいじめる声だ。
でも、事実そうなんだし、隠しても仕方ない。
黙って頷く。
「いいよ。して」
里香は淫靡な笑みを浮かべて、そう言った。




里香の手を木につかせて、こっちにお尻を出させる。
そして、浴衣の隙間から手をもぐらせる。
「待って」
「何?」
「キ、キスして」
里香が恥ずかしそうに言う。
「了解」
赤い顔をしてこっちをむいた里香にキスをする。
「ん」
舌を里香の口の中に入れる。
「んっ…ちゅ、んんっ……」
里香の口内を僕の舌が隅々まで這い回る。
「ぷはっ……裕一ぃ」
息が続かなくなって、口を離す。
だが里香のおねだり視線に答えて、もう一度口と口を合わせる。
さっきよりもさらに激しく里香の口内を味わう。
里香の舌と絡め、歯茎の裏まで舌を這わせ、里香の唾液と僕の唾液を混ぜて共有する。
「っはぁっ…」
キスの余韻で少し呆けている里香の秘所に触れる。そこはすでにクチュと水音がしそうなくらい湿っていた。
「キスだけでこんなになってる。里香はエッチだなあ」
「そ、それは裕一があんなにすごいキスをするから」
里香が恥ずかしそうに呟く。それが更に僕を興奮させる。
「あれ、俺のせい?本当に」
僕は指を里香の中に滑り込ませ、激しく動かす。
「ああっ……そ、そんなきゅうにだめっ…そんな激しくしたら、ああぁっ」
里香は体をビクビクと震わせ、木に体重をかける。
もう里香のそこはぐちょぐちょに濡れていて、その蜜が脚まで垂れはじめていた。
もういいかな?
里香のそこから指を抜き、いきりたったそれを入り口にあわせる。
「あっ……」
「里香、いくよ」
里香は木を見たまま、首を縦に振る。
僕は背後からそれを見て、腰を一気に入れる。
「ふああああっ」
そのままぼくのそれで、里香を下から突き上げるように里香の中を刺激する。
最初は小さめに、そして少しづつ腰の振り幅を大きくする。
「っああぁ、ゆ、ゆういちぃ…つよいよぉ」
「ご、ごめん。我慢できない」
目の前にある里香の浴衣に包まれた体とそこから覗くうなじと、白いお尻、そして紅潮した頬。
これを前に優しくするのは無理だった。痛くしないようにだけ気を使うのが限界だ。
「ふあっ……いいよ…たまには裕一が、ああっ…好きなようにして……いいよっ。いつも、っ私の…ふんっ……こと考えてやってくれる、からね」
そう言って色っぽく、でも恥ずかしそうに笑う里香。
脳内で理性かなにかが飛ぶ音がする。
里香の腰をしっかりと両手で押さえる。
そして一息に子宮口まで。
「やああっ…ひやああぁ……ゆういち…すごいっ……あああっ!」
木に手をつき僕の責めに堪える里香。
その後ろ姿が余計に僕を興奮させる。
「ひいやぁ……ああっ…あっ…ふああっ……んあああっ…ああっ!」
僕が一突きするたびに里香は体を震わせ、あえぎ声を上げる。
「あっ…ダ、ダメ…もう…イク……私イっちゃう、イっあああ!」
里香が電気を流されたみたいに背筋を反らし、締め付けてくる。
でも僕は止まらずに動き続ける。
「っぅあああっ…私っ、イってるからぁ、や、あああっ……や、あっ、ひやぃあぁぁ!」
「里香、もうすこしだからっ」
「やあっ…ふああああああああっ……ごめ、わたしこわれちゃああっ……」
「ふああぁ…はああぁっ…」
段々声に力が無くなっていく里香。そして僕ももう出そうになる。
「里香、いくよ」
「裕一…はや、はやくっ」
里香の一番深いところで精を放つ。
びゅる。びゅくくっ。
ガクガクと震える里香の腰を押さえつけながら、子宮に膨大な量の精液を注ぎ込む。
「ぁああっ…でてる、熱いの、あ、中、ふああぁ……また、イク、イってるのに、イッちゃう、ひぃああああぁあああああっ」
里香は体中を痙攣させながら背中を大きく反らせて、木にもたれかかる。

そのまま休み、息をなんとか整えた里香の第一声は
「裕一の鬼」
だった。

明日、里香と学校で会うのが怖くなったのは内緒だ。


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